政岡憲三は、戦前から戦後間もなくにかけて、日本アニメーションの黎明期にその制作に携わり、セル画技法やトーキーなどの技術を日本で初めて本格的に導入、日本のアニメーション界の発展に多大なる影響を与えた人物です。
そういった技術的な革新もさることながら、「くもとちゅうりっぷ」に代表される政岡の作品は、詩情に溢れ、優れた表現力でもって鑑賞者の心情に訴えかけるものでした。それらにより、子ども向けの娯楽でしかなかった漫画映画が、それ以上の可能性を持ち合わせていることに、人々は気づかされることとなったのです。
こうした政岡の功績を鑑みて、彼を「日本アニメーションの父」と称する声も少なくありませんが、一般的な知名度が依然として低いのは、彼の活躍した時代が太平洋戦争の戦前・戦時下であったことが大きく影響しているでしょう。一方で、アニメーションが日本を代表する文化の一つと謳われる現代において、政岡への注目は再度高まっています。いま彼の作品を見ることは、今日のアニメーションを見る上でも重要な足がかりとなるのではないでしょうか。
今回の上映会では、数ある政岡の作品の中から、日本アニメーション界にとってもエポックメイキングとなった作品をセレクトしました。また、上映会にあわせて、彼の足跡を追った伝記とフィルモグラフィーをご用意致します。
アニメーションの好きな方、関心のある方、制作に関わっている方など、様々な方にお越し頂ければ幸いです。
(企画:中島彩・米子匡司)