木曜日、喫茶すわるの営業中に開催する読書会です。
開催中も喫茶は通常営業していますので、イベントにご参加でなくともお越しいただけます。
今回の読書会の対象図書は『ディアスポラ』グレッグ・イーガン(ハヤカワ文庫)。
現代ハードSFの旗手であるグレッグ・イーガンが『順列都市』『万物理論』に続いて1997年に発表した長編で、彼のそれまでの長編が舞台としていた21世紀から、遠く30世紀の未来へと時代を移し、私たちの遺伝的|文化的子孫である登場人物たちが彼方を目指す、ディアスポラ(離散・散在)を描く小説です。
彼方へ思考を飛ばすための巡業読書会、先月の第1回は伊藤邦武さんの『物語 哲学の歴史』から、ひとが哲学するという営みをめぐって、ゆるゆると語りました。
5月25日(木)に開催する第2回は、哲学史からいきなりハードSFへとジャンプし、現代最高のSF作家との評価がほぼ定まっているグレッグ・イーガンの代表作『ディアスポラ』(山岸真訳、ハヤカワ文庫SF)をとりあげます。
ストーリー上は30世紀を舞台にした宇宙冒険SFですが、著者の徹底した思考によって世界観が構成されており、物理学や数学に対する言及も頻繁に登場します。たとえば、「位相空間」「N次元球面」「固有曲率」などといった単語が飛び交い、ある程度読者が置いてきぼりになるのは織り込み済みで、まさに著者にとっての「彼方」を最大限追求した作品といえます。(人文系がお好きな方に向けて言えば、ダニエル・C・デネット『解明される意識』の認識モデルなどが参照されているそうです)
とはいえ、巻末には用語解説リストや、構成の見取り図も示されており、まさに終わらない謎解きを楽しめる贅沢な娯楽作品です。解説によると、読み通すには「わからないところをどんどん飛ばす」のがコツとか。
30世紀の世界や人間について、思考を飛ばす時間を楽しみにしています。
いまこことは違ったルールのある世界の彼方へ思考を飛ばすことで、新たな気づきがうまれることを期待して2017年2月27日に立ち上げた読書会です。
第一回目ではそれぞれの彼方感がおぼろげながら共有する、ふわふわした感覚が面白かったのですが、そういう抽象さは引き継ぎつつ、僕はSFとされている本をしっかりと読んだことはないのですが、哲学史からSFに行くのは真っ当なことのように感じています。きっと設定がばっちしある読み物ですので、そこを一旦「彼方」と捉えてみた上でどのような思考が生まれるのか、想像するだけでにやけてきます。
(企画:秋田光軌、タカハシ 'タカカーン' セイジ)